防災士の日記
意外と知らなかった「煙が恐い」その理由!
こんにちわ!今日も木村がお相手させていただきます。
すっかり秋の香りが立ち込める季節となりましたね。
これから、色々なものがおいしくなりますので、楽しみです!
同時にこれからは、徐々に空気の湿度も低くなってきます。
乾燥期に入る前に、チェックしておきましょう「煙が恐いワケ」を。
始めます!
さて、こんなタイトルだからって、「また言ってらぁ」なんて、思わないで下さいね(TーT)ノ
知っているようで、よくよく聞いてみると「あ!そうなの?!」と思えることが意外と多いんです。
今回のテーマをお話するに当たり、市の消防局管理指導課にご協力・ご指導を頂きました。
■注意すべきは「火よりも煙!」
よく「煙が恐い、煙が恐い」と言います。
私も「ああ、煙は視界もなくなっちゃうし、息もできなくなっちゃうし、気をつけないといけないなー」ぐらいに思っていました。
ところが!!
煙の脅威は、そんな甘いものではないことが、先日受けた指導で分かったのです。
火災の死亡原因の主たるところは、以下のようになっています。
火 傷 約50%
一酸化炭素中毒 約40%
(概要)
「なーんだ。やっぱり火のほうが恐いじゃん」と思った方、
「ちょっと待った!」です。
火傷が原因で亡くなった方の中には、一酸化炭素中毒が原因で動けなくなってしまったために、火傷死に至ったと考えられるケースが多くあるそうです。
ただいま、「一酸化炭素中毒が原因で動けなくなってしまう」と言いました。
そうなのです!
一酸化炭素中毒にかかると、脳に酸素が供給されず、結果的に身体が麻痺状態となり、動くことができなくなってしまうのです。
どういうことかと申しますと・・・
通常、人体に流れる血液中の赤血球は、酸素を運ぶ役目を果たしています。
(中学校の理科で、こんなのやりましたよね)
ところが!
煙に含まれる一酸化炭素を吸い、体内に取り込まれると、
酸素が赤血球に結合しようとする力の、約200倍以上の力で一酸化炭素は赤血球と結合してしまうのです。
つまり!
多少の空気が混ざっていたとしても、一酸化炭素が強力に血液に取り込まれるために、酸素は吸っていないのと、同じことになってしまうのです。
(通常、空気中の約20%が酸素とされていますので、その1/200の一酸化炭素で、赤血球への結合が50:50となります。20%の1/200ということは、0.1%です。空気中にわずか0.1%以上の一酸化炭素があるだけで、人体は危険にさらされてしまうことになります。)
人体で最も酸素の消費量が激しいのは「脳」です。
一酸化炭素を吸うと、脳が急激に酸欠状態となり、脳が正常に機能しなくなります。
すると、身体が麻痺を起こし、動けなくなってしまい、避難ができなくなってしまうのです。
ここまでで、一酸化炭素中毒の恐ろしさの片鱗はお分かりいただけましたでしょうか?
では、「一酸化炭素」はどのように発生するのか、追っていきます。
通常、モノが燃焼するときには酸素が必要です(これも中学の理科でやりましたね。)
酸素が十分にあるところで燃焼すると、炭素と結合し「二酸化炭素(CO2)」が発生します。
ところが、閉鎖的な空間(居室など)で燃焼し続け、酸素が不足してくると、不完全燃焼状態になり、「一酸化炭素(CO)」が生じるのです。
また、木材や紙、繊維、合成樹脂などが燃焼した際に、有毒ガス的に発生するのが一酸化炭素なのです。
つまり、一般家屋で発生する火災は、一酸化炭素が非常に生じやすい環境といえます。
ここで「有毒ガス」について触れておきましょう。
羊毛・羽毛・絹・ナイロン・アクリルなどが燃焼すると「シアン化水素」
人工皮革・塩化ビニールなどが燃焼すると「塩化水素」が生じます。
一酸化炭素含め、これらの気体は「一回吸うだけで!」卒倒してしまうほどの力を持っています。
例えば、
閉まっているドアの向こうから煙が薄っすら入ってきたからといって、不用意にドアを開けると、もろに煙を吸い込んでしまい、その場で卒倒してしまいます。
こんなときは、
口に布(できれば湿らせた布)を当てながら、身体を低くして、ドアをゆっくり開けると、煙をもろに吸わずに済みます。
これも、火災から身を守る、一つの術ですね!
煙が恐い理由がまだあります。
火は、ある程度離れれば、熱くも無く安全を確保できることもあるでしょう。
しかし、煙は身体にまとわりつくようについてくることがあります。火から逃れたとしても、煙からは、簡単には逃れられないのです。
これらを踏まえ、
煙の一番の恐ろしさといわれる「移動速度」を見てみましょう。
天井を伝って、水平方向に移動する速さは、毎秒0.5m、人が歩く速さ程度です。
ところが、階段やエレベーターが煙突の役目を果たし、垂直方向の上昇速度は、毎秒3m~5m。速めに走る自転車の速度です。
ビルなど高層の建物で火災に見舞われたとき、ずっと下階での火災だからと、悠長なことは考えていられないということが、分かります。
では、いざ火災に見舞われたときは、どのように行動すればよいか、いよいよお話していきます。
①煙が少なく、視界がいいうちに、姿勢を低く保ち、”早く”出口に向かいましょう。
②視界が悪くなってきたら、顔を床に近づけ、壁に沿うように避難しましょう。視覚が効かない中で、通路や部屋の真ん中を移動すると、方向感覚を失い、避難が滞ります。
③階段は、四つ這いになり、足から這うように降りましょう。このときも、顔は床(階段)に近づけましょう。床から15cm程度には空気が流れています。(煙が極度に多い場合、15cmもありませんが、空気の層が残っているそうです。)
④煙だけだから、または煙が少ないからといって、何かを取りに戻らないことです。一酸化炭素が充満していることもあり、まさに自殺行為となります。
⑤不慣れな建物、特に大きな建物に入るときは、非常口を確認するように心がけましょう。
⑥避難訓練には積極的に参加し、いざというときにも、落ち着いて行動できるようにしましょう。(実際、火災に見舞われながらも、「落ち着いて行動できた」と答えた方のほとんどが、避難訓練を受けていたそうです。)
これが全部ではありませんが、究極的には、これらが重要です。
今回は、随分と長くなってしまいましたが、
みなさん、煙の恐さが、今までよりもお分かりいただけましたでしょうか。
私の筆足らずのために、分かりにくかったところもあるかと思いますので、
今回書いた内容については、今後も部分的に触れて参ります。
また、「煙について、火事についてもっと知りたい!」と思われた方は、お気軽にお問い合わせいただいても結構ですし、お近くの消防署でも、詳しく教えてくれるはずですので、コレを機会に、お勉強してみてもいいかもしれませんね^^。
長丁場、お付き合いいただきまして、誠にありがとうございました。
また、お会いできる日を楽しみにしております。
木村周吾
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